秋が来た。やっとの秋、待ち詫びていましたぞ。街路樹の葉先がオレンジ。黄色、緑のまだら変色が始まっている。 親戚が集えば、自然、近所のダレヤカレヤの話になる。若い頃なら、話題はおめでたごとが主流だったけれど、メンツはもう若くはないので、病気や施設入所、はたまた鬼籍に入った人の話になる。「92までは元気だったのにねえ」「わからないもんだよねえ」。そもそも実家のご近所さんの話題に疎い身としては、話題には入れない。孫と一緒に茶菓子をつつきながら、手持無沙汰なんである。 「ばあばは4桁生きて」。 孫からの不意打ちの耳打ちである。 4桁というと最低でも1000歳? 「うん」いくら可愛いあなたのお願いでもねえ、それはちょっと無理だなあ。叶えてあげられるようがんばってみたいけどね。孫の表情が曇る。なんだなんだ? 急になんでそんなこと言うの? ふふふと孫は答えない。 夢を見る、目が覚める。さえずる雀、玄関先に立って空をみていると、求愛活動なのか、グループ活動なのか、伝達しながらピヨピヨ飛び回る、楽しそうだ。そもそもこれって雀なの? 無知を楽しむ朝の空。幸せだ。 世界がサラになったような朝。本格的な秋の到来。空気が違う。空にはたなびき美し模様の雲。単に昨日の続きが連れてきた朝じゃない。もしかして夢の続き? 朝の瞑想ならぬ、朝の妄想。違う世界にパラレルした気分を味わう。私ではないだれか。新しい人生。能力にあふれて、万能感に満ちた一日が始まる。資金繰りも、ぐるりの環境も、ニーズを満たせていない現実を考える必要のない私じゃない誰か。もやもやなんてどこ吹く風。どうせなら、マイナス10キロくらいの細身スタイルのビジュアルがいいな。 集積所には“燃やすゴミ”が積まれている。今日は水曜日か。途端に現実に引き戻される。あーあ、なんだかちょっと楽しい気分だったのにな。 内閣が変わった。高市総理の誕生だ。女性とか男性とか区分して考えるのは好きではないものの、なぜか新鮮である。偉い人のこと。十分発言には考慮を重ねて発するのだろうけれど、この人の言葉はまっすぐ寄り道せずに届いてくる。正直で率直な言葉である。大きな笑顔、艶々な髪。髪はいずれにしても、笑顔自体がこの人の大きな武器なのだろう。この笑顔と正直さで、この人は目の前の道を歩いでいくのだろう。次々繰り出される障害を、上手に避けたり、...