スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

3月, 2023の投稿を表示しています

流し雛

お一日参りに行く。 とは言っても今日は3日。1日に行けなかったので遅刻参拝である。 車を止めて鳥居をくぐる。見上げると鳥が飛んでいる。大きく羽を広げて、気流に身を任せて、すごく高い場所を飛んでいる。とんびかなあ、あんな高い場所。優雅に孤高の高さを行く。きっと気温は低いだろうけど、気ままに自分を空にゆだね輪を描いて。いいもの見たな。幸先のいい思いだ。 境内には、隣の公園に来たのだろう親子連れが2組。老齢の紳士が一人。自転車で到着した女性が一人。横目で見ながら、無事2月を乗り越えられた感謝と、3月の意宣りを胸に氏神様に手を合わせる。 境内を散策していると、自転車女性が靴を脱いで壁に寄りかかっている。顔が歪んでいる。声をかける。持病が原因で痛みがひどいらしい。少し経てば痛みは治まる。1つお願いしても良いですか。言われるまま頼まれごとミッションをこなし、他に手伝えることがありますかと尋ねると、「大丈夫」とのこと。境内散策を続ける。 高い空ととんび。気持ちよさそうだったなあ。いいなあ、上昇気流に乗ってしまえば羽ばたきもいらない。気持ちよさを存分に楽しんでいるように見えた。つらつら考えていると、さきほどの自転車女性に声をかけられ返事をすると、女性はすごい勢いで喋りだした。圧倒されながら話を聴く。なんかすごく大変らしい。なんかすごい頑張っているらしい。すごい量の情報がすごい勢いで脳内に入ってきて、理解したり整理したりするのに手間取る。 彼女の激動ストーリーは20分ほど続いた。聴きながら時間が気になる。同時に、「あっごめんなさい。お忙しいのに」と言われ、「あっ…大丈夫です」などと、あまり大丈夫ではないのに反射で言ってしまう。根元が白いまま伸び切ったウェーブのかかった髪。異国的な匂いのする服装。腕には大きなパワーストーンのブレスレットがたくさん。今の大変な状況を打破したい気持ちが外見からも窺える。 この神社は、明るく生きる力を与えてくださるご利益があるそうですよ。…しまった。何度も来ていると、さっき聴いたばかりじゃないか。余計なことを言ったとつかのま後悔する。しかし、目の前の表情は明るくなった。「聞いてくれてありがとう」「頑張ってくださいね」。別れ際、名前を聞かれ、名前を告げてさよならした。 彼女が教えてくれた年齢は、私とほぼ同じだった。体力的にも精神的にも力が