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交流分析(機能分析+エゴグラム)

私のエゴを図るのか?25年前に出会ったときのfirst impressionである。
入社面接で、エゴグラムは私の目の前に颯爽と現れた。「初対面で私のエゴに切り込むとは不遜な奴だ」と、思ったかどうかは忘れてしまったが、「エゴグラム診断」と記された面接用紙のインパクトはよく覚えている。準備できない私を置いてきぼりにしてまま、面接官は質問項目を読み上げ始めた。

人は一人では生きられない。好む、好まざるに関わらず、誰かしかと関わって生きていく。エゴグラムは、性格診断ではない。他者とかかわる上で、自分が使いがちな心的エネルギーの消費傾向、つまり自我状態を可視化してくれるツールなのである。

まず相談者の主訴に耳を澄まし、相談者の言葉にあらわれてくる思い、口癖や語尾の特性に耳を傾けながら、相談者の心のスクリーンに映しされる心象を共有する。

エゴグラム診断は、数値で導き出される。機能の高低を個性として尊重し、決して優劣で判断することはない。他の機能とのバランスを見ながら、“今、ここ”の自分を顧みる。自らのコミュニケーション傾向に気づき、自律的にコントロールすることで解決を試みるのである。

交流分析では、心を3つの構造に分ける。まず1つ目はC(child)、天衣無縫、純粋な心、興味のまんま、欲望の赴くまま行動してしまう活動的な心。そして適応し、順応することで安心しようとする心。
人は誰でも、赤ん坊としてこの世に誕生し、保護者、親の真似をして社会性を学んでいく。このモデルとしての親の価値観がたっぷり注ぎ込まれたのが、2つ目のP(parents)である。3つ目は、6歳から12歳にかけて自らが獲得した自我。“今、ここ”の行動を決める心A(adult)である。

Pを、CP、NPの2つに、Cを、FC、ACの2つにさらに分ける。
CP (Critical Parent)は、厳しい親。理想や目標を基準に考え行動する、管理者やリーダー的な機能である。NP (Nurturing Parent)は、養育的な親。愛情深く優しさの機能、受容的、共感的に他者に寄り添う働きである。

FC (Free Child)は、自由な子ども。天衣無縫で好奇心旺盛、感性は豊か。のびのびと自由に自然に感情や要求を表現する。AC(Adapted Child)は、優等生的な感性。従順で協調性が高く、受身的。お行儀よくふるまい、絶えず周囲の期待に応えようとする傾向を持つ。新しい環境に順応したり、我慢したりしながら、自らの居場所作りには欠かせない機能であるが、何かあれば他人ではなく自分を責めてしまったりする。

そしてA(Adult)は自立した理性的な自我。“今、ここ” で状況を客観的に判断する。

正論でいくと小難しいが、サザエさん一家に当てはめていくとわかりやすい。CPは厳し目な波平さん、NPは優しいフネさん、FC担当はいつも楽しく遠慮なく自己主張してくるサザエさんとかカツオ君。ノリスケおじさんもこのグループ。AC担当はおりこうさんのワカメちゃん。そしてA担当は如才のないマスオさんである。

CP機能の強い人は、ルールを重んじたり、正義感・役割意識・義務感の強い人が多かったりする。機能が高すぎれば、上から目線だったり、ついつい批判しがちになる。
NP機能は優しさだけれど、高すぎれば過保護・過干渉になり、心ならずも相手の自律性を奪ってしまいかねない。相手に必要以上の依存心を育ててしまいかねない。

FCが高いと、自己表現とともに企画力や創造性に優れているが、高すぎればわがままだったり、自分勝手と言われやすい。ACが高すぎれば自分の意見より、周囲を優先し追従してしまうこともある。
ただ、この2つの関係性には暗黙の法則がある。最近、心が痛くなるのは相談者のFCとACのバランスである。乱暴な言い方をすれば、自己主張の強い人は、人の話は耳に入りにくい。周囲を優先する人は自己主張をしない。FCとACの高低差がある程度あれば、傾向としてはシンプルだ。

しかし、最近、FC、ACが横並びになっている傾向の人が多いのだ。わかってほしい、主張したいと思いながら、相手の顔色を見すぎて本来の均衡を崩し、心的エネルギーをここで消耗している傾向が多く見られるのだ。わかってほしい、言いたいことは譲れない、けれど目の前の関係性は壊したくはないと、自分らしさと、他人の心が離れることを誰にも気づかれないようそっと天秤にかけている様子が伺える。そういう場合こそAの出番なのである。今の状況は、どちらの機能を優先すべきか、俯瞰的な目をもって大局を見て判断する。

世の中はVUCAの時代(変動性が高く予測が難しい複雑化した社会)。ルールや経験に縛られず、予測しづらい変動性に対応するといった難しい能力が求められている。傷つくことを恐れるのは当然だ。


大丈夫だよ、今ここにいる時だけでもよいから、あなたのままでいれば良いよ。ただ、知っておいてほしいだけだよ。自分の心は自分のものにしておかないと、自分を守れなくなる時があるかも知れない。それよりは自分の良いところを十分知っておいてよ。
私には見えるよ。どんな美点があなたにあるか。時には弱っちくなっても、傷ついたとしても、あなたその美点と一緒に今まで生きてきたんでしょ。だってまだそのキラキラする特性をしっかり抱えているじゃない。

交流分析は、コミュニケーションを可視化できるツールである。誰もが自分特有の機能を持っている。エゴグラムはその機能を分析し、自覚することで、コミュニケーション傾向を変容させていく可能性を秘めている。
だからこそ、自分のコミュニケーション傾向を可視化する必要がある。対話を可視化する対話分析。自分が取りがちな態度を知るOKグラム、ストレスフルになった時の感情傾向をひもとく人生脚本。交流分析の理論は、今すぐ実際に使えるものが多い。興味のある方は、ググってみてください。カウンセリングや紹介講座なども引き受けています。お気軽にぜひどうぞ。