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ERA 2025

月を見上げる。冬の月である。
宵闇の時間。この上が飛行機の幹線航路であることを知る。月の脇を赤と青の点滅ランプが過ぎていく。


12月。変化の1年だった。自分のこともそうだけれど、世の中のできごとも然り。只中では気づかない。立ち止まると見えてくる。流れは、節目は、こんな形で訪れるのだ。最中は気づかない。振り返るから節目がつく。そんな気がする。流れに飲まれているのも悪くはない。しかし、自覚がなければ評価も生まれない。
まだまだ進んでいかなきゃな、元気でいなきゃいけないな。生き延びるのが人生なのだ。現状維持は衰退の入口。変化を進んで受け入れなければ、健全は少しずつ、でも確実に失われていく。変化のさなかは、妙な静けさのなかの膠着に耐えていくことなのかもしれない。


組織の定期面談をする。これは月次のお仕事。
相談者は多様である。個性も価値観も、働く場所も環境も、役割だって違うはずなのに、不思議なものでその時期特有に、個人の訴えには共通している課題がある。
人の受け取り方、感受性や季節的な環境と人との性質の呼応が、共通するのか、共有する意識が変化を呼び寄せるのか、それともそもそも日本特有の課題なのか。実は、大きな磁石みたいなものを、経過する時間が含んでいて、潜在的に人の心は同じ方向を向いてしまうのかも知れない。
言えない人、言わない人、仕方がないと口にする前に諦める人。責める人、嘆く人、斜めに構えて目の前のできごとにフォーカスせずに、自分の内部に答えを見つける人。
多様な表面を持ちながら、抱えたものを吐き出すのを躊躇うのは世の常だ。防衛機制は自分を守る盾である。口をつぐんでいた方が無難であることは間違いない。そう思いながら自分自身を振り返る。不思議だ。自分の心がそういう人たちを引き寄せているような気持ちになってくる。心許ない。そう思う自分自身の在り方が、似たような悩みを吸い寄せているような。そんな気持ちを抱えていると、相談者はこちらの気持ちをまるで見透かしたように、同じような心持ちを口にする。エスパーなの? なんで私が思っていること、わかっちゃうの? ほんとうはカウンセラーは私じゃなくて、あなたなんじゃないの?

変化の話に戻ろう。
積極的に動いてはいけない時がある。結果を出すには行動しかないと思える時もあるけれど、じっと内側を考えていかなければいけない時間が。生きている途中では、必ず持たなきゃいけない気がしている。
もちろん日々いろいろあるし、対処しなくちゃならんこともあるのだけれど、足元がしっかりしないのに舵を切れば、望まない場所に行きついてしまう。
そういう時、月を見上げる。時間が来たら空に昇って、季節ごとの軌道を描いて沈む月。満ちていき、欠けていく。丸くなって、削られて月に一度完全体になり、真空のように色をなくす。月自体、形を変えるわけではなくて、太陽と地球の影によって見え方が変わるだけなのだけど、でも月は見上げるたびに定期的な周期で違う姿を現すのだ。
見え方を変えるだけで、月そのものの変化かと聞かれれば、私たちはそれをしっかりと理解はできない。けれど、果てしない時を月はそうやって存在している。見上げる私たちの目が、心が変わらない月に心を重ねて、自分ようの感情を月に映している。変化するのは人間の方なのだ。


さてさて、われらが職業訓練。事務所と教室の渡り廊下で団らんする彼らの姿を見るのも、来月でおしまいになる。寂しくなるなあ。10月にはじまって1月で修了。
修了が近くなると、受講生たちは自分たちの変化を振り返り、習得した知識やスキルを自認して、これからの自分を描き出していく。彼ら彼女らの心に、かわるがわる現れる希望や不安はまるで夜の雲のようである。風の強い日は目まぐるしく、雲のない日は、まるで順風満帆ゆったりと晴れやかで。東に現れたての月は大きく温かみのる黄色なのに、上空に上がると冷たく白く光っていて。

月末には、彼らが作ったHPが教室用のクラウドで閲覧のためアップされるらしい。実はとても楽しみにしている。それは彼らの可能性のようで、わくわくとした未来に向かう意思のようで。もちろん作る側はウンウンうなりながら、成果物を仕上げていくのだろうけれど、だからこそそれらは尊さを増していくのだけれど。
彼らの力になりたい。できるだけのことを差し出したい。しかし、時代の変化はますますスピードを増して、組織の価値観も、もちろん個人の価値観も、働き方だって多様に変化していくに違いない。
けれども何万光年も実は月は形を変えてはいない(たぶん)。だからこそ、見つけた強みや自認している能力、物を見る目の変化さえ、彼ら彼女らにとってかけがえのないものだ。自分で見つけ、自分で掘って、自分なりの色を付けていった軌跡なのだから。
けれどスタートにはゴールがセット。2つの地点があるから歩いていけるのである。スキルという武器は持った。歩いていくための力強い足は、みんなそれぞれ持っている。私たちも経験という名の武器を携え、しっかり自分の足で基地を作っていく。

われらが理念は、「つなぐ」。スキルを、自己理解促進を、そして就職先と可能性を。各自がのびやかに自分を生かす道を見つけてほしい。歩きやすい道も、でこぼこと歩きにくい区間だってある。わからなくなったら立ち止まればいい。苦しくなったら時には立ち尽くす勇気も必要だ。月を見上げながら、少しおセンチになっている夜である。