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親衛隊

岩崎宏美コンサートに出かけた。ご縁があって、やり取りがあって、なんやかんやでチケットを用意してくださったのである。

客席の前方に、同年代、もしくは私たちよりご年配の方がずらーっと座っている。そのうちにいそいそと揃いのTシャツを着だして、凛々し気にきりっと黄色いハチマキを装着する。よく見ると、中学生くらいの男子や付き添いのお母さま的な方もいらして、なんだかとても素敵な面子なのである。まだ彼が生まれ出ていないだろう全盛期。なのに前々世代に馴染んでハチマキ巻いちゃう情熱。美しいものは世代もなにもあまり関係ないよな。そもそも会場に集った私たち、来てる時点で彼らと同類。
ライトの帯が綺麗に流れる。のびやかな美声。すんなり哀しい歌詞が心に刺さる。説得力あるよなあ。なつかしい歌、ソラでも口ずさめる。こんなドラマチックな舞台が長い人生のなかあったかしら。少なくともこんな赤裸々な言葉など言ったことがない。ないんだけれど、歌詞に投影される感情が確かに記憶の中にあったから響くのだろう。
プロはすごい。天性+時間をかけて磨いたからこその今。直ぐに伸びた姿勢から生み出される声は心を打つ。鍛え上げられた喉から出る美声は、圧倒的な伸びやかさでみんなの心に着地して琴線を共鳴させる。

“宏美ちゃん”が語りだす。
48年も続くと思っていなかった。難しい曲も多くて、楽譜を渡されても“無理”と思うこともあったけれどなんとかできてきた。乗り越えられたのは、先輩の雄姿、憧れ感情、支えてくれたすべての方のおかげ。
でもね、若い頃は高いキーも平気だったけれど、今は苦戦することだってある。だいたい、年取って17歳、18歳の洋服が着られます?(笑) それとおんなじことなんですよ。
“マドンナたちのララバイ”は、ご存じ火曜サスペンス劇場のエンディング曲。“戦場”とか“戦士”だとか、若い自分には想像しにくかった。ヒットを自分の目でしかと確かめられた。
「元気をもらっています」、「勇気が出ます」、「わかってもらえる気がする」「救われます」。当時の“24時間働けますか的企業戦士の方々から言葉をいただいて。大きな励みになった。


ヒット曲のメドレーになる。「シンデレラハネムーン」はオーバーアクション。まるで物真似の模倣のよう。案外お茶目さんなのね、宏美ちゃん。
親衛隊も動き出す。コンサートライトのピンクが規則正しく揺らめく。「ヒロッミちゃーん!!」の野太い声が地響く。スパンコールを繋ぎ合わせた文字盤が左右に揺れて、真似をして私たちも盛り上げる。万歳したり、腕を左右に揺らしたり、体を前後に揺らしてみたり。
すごく楽しい。親衛隊の先導がウェーブ的に後ろの席に伝播して。もう私たちったら初めて会ったものたち同士なのに、なんだか不思議、熱量のある一体感。
ギターにドラム、ピアノ、バイオリン、伴奏者が紹介されると、親衛隊らの背中に、「ともに我らも演者一員」的な誇らしさが漂う。
アンコールを迎えて親衛隊の背中も感極まる。寂しさみたいな片鱗と達成感が肩に滲む。ともに時間を惜しむ。あっという間の2時間だった。

「親衛隊、すごいね」先に呟いたのは、一緒に来ていた45年来の友人ヒロミちゃん。ヒロミちゃんは背が高く、岩崎宏美似の真っすぐでつやつやの美髪で、遥か昔から自慢の友人。あの頃一緒に見た“平凡”だか“明星”の付録「歌本」の話題になって、「ヒデキ好きだったよねー」「あれは○○子のジュリー好きに張り合ったのよ」無邪気な時代に潜っていく。
「親衛隊入ろうか」「誰のよ。ヒデキは亡くなっちゃったし、キヨシローもいないし」「俺の話を5分聞いてほしい人は生きてるじゃん」「横山剣ね。クレイジーケンバンドね」「まあ年取ったってことだよね」。

楽屋に伺う。入口には、親衛隊から寄贈されたというピンクの暖簾。記念撮影をお願いすると、「背の順並びみたい」などと笑う。
ステージのお礼と、親衛隊の方から十分元気をいただいたことをお伝えすると、親衛隊メンバーは、全国からコンサートを盛り上げてくださっているとのこと。「勇気をもらいました」と伝えると、疲れているだろうに女子会Talkのノリで応じてくださる。


錯綜する華やかなライト。歌とともに歌詞から浮かんで来る物語。魅了されながら、浮かんできた過去の思いとこれからのこと。観客にも親衛隊にみんなにも生まれただろう明日への希望と活気。なにより“ヒロミッちゃーん”の叫びは、ツヤツヤしていた。幾多あるなんやかんやを片付けて、駆けつけてきただろう仲間たち。
私たち、大切ななにかを確かに受け取ったよね。真似していきたいなあ。きちんと影響されちゃうんだよなあ。
関わる人や企業の親衛隊でありたいと強く心に刻む。

日本クリエート自体が誰かの親衛隊でいたい。目指すところは、明るく元気に勇気を提供すること。たくさん感じてたくさん受け取って、成長して大きくなって、明るく温かく未来を繋ぐお手伝いがしたい。大切なことは目には見えない。心が動けばバイタリティが生まれてくる。行動の種が心に根差していく。
時を重ねて、こんな伝播ができていったらすごいな。それが夢であり目標だ。みんなありがとう。私たちも頑張るぜ。